雛人形の選び方
皆様が雛人形を選ばれる時のご参考にしていただければ幸いです。
◆ 大人目線で選ぶ
赤ちゃんが健やかに成長され、学校を卒業、成人となり結婚をし、歳を重ねてゆく。贈ってくださった方々の自分への思いを感じながら末永く飾っていただきたいと思います。
◆ 上質であること
末永く飾るためには、人形が上質であることが大切です。作者の思いや技術が注がれていることをチェックしてください。どこに技術が込められているのか?お店でお尋ねください。
◆ 飾り方も大切
人形が際立つように、屏風やお道具はシンプルがお勧めです。
窮屈な飾り方にならないようにしたいですね。
◆ 上質とは?
フォルムが美しい。
姿勢がよく、顔と身体などのバランスがよい。人形だけでなく、扇、冠、台などのバランスの良さも必要ではないでしょうか。
◆ 古典下げ髪Ⅰ
後姿も美しく女性の優しさが表われます。「古典下げ髪」は顔を面長に、肌を白く見せる日本古来の髪型です。江戸、明治期に作られていましたが、髪結いの技術も難しく、現在では稀少となっています。
古典下げ髪についてウィキペディアもご覧ください。
◆ どこから見ても美しいⅡ
後ろ姿や仕立ても美しい。
◆ 姿の美しさ
雄雛は姿勢がよく立派であることが大切です。威厳ある凛々しい姿であってほしいですね。
◆ 古典下げ髪Ⅱ
髪型は源氏絵巻にも登場する日本古来の女性の髪形です。雛人形が誕生した江戸時代のひな人形の髪型です。
◆ 冠について1
冠を結わえる紐はありません。
かつて、公家や武士はこうしてかぶっていました。横に伸びた棒で冠の中のマゲを突き刺しています。式正冠(しきせいかんむり)といいます。
こちらもご覧ください。
◆ 冠について2
冠の後ろに真っ直ぐ上に立ったものをものを立纓(りゅうえい)といい、江戸時代の「天皇のしるし」でした。
また、江戸になるまでは公家、武士すべてが垂れた垂纓(すいえい)を着装していました。
◆ 桧扇(ひおうぎ)
顔や手と統一感をもたせるため、扇には胡粉絵の具が使われています。また絵柄も人形を引き立てるためとてもシンプルです。
◆ 書き目
雛人形の目は一般的にガラスですが、これは筆によって手書きされています。目だけでなく、まつ毛、眉毛、生え際などの美しさもご覧ください。
◆ 顔
顔は、昔ながらの職人の技。顔は胡粉を何度も重ね塗りし、口は手彫りをして口の奥まで作ります。
◆ 桧扇の糸
扇の糸まで追求しました。
糸一本の美しさにまで心を込めました。
◆ 手
手をご覧になったことはありますか?
人間のバランスとしてふさわしい手。
細長い棒のような手ではなく、身体や顔と釣り合いのとれた石川潤平工房オリジナルの手です。
◆ 段飾り
赤い毛せんと金屏風が洋の空間に似合います。
お道具や三人官女がシンプルであることで、よりいっそうお内裏様が引き立ちます。
ひな人形の選び方
石川潤平さんの木目込み人形
石川潤平さんの木目込み人形の特徴のご説明です。
◆ 木目込み人形とはⅠ
型を使ってお人形の胴を作る。① 桐のおがくずと糊を混ぜて練る。② 型に入れる。③ 乾燥させて型から取り出す。
◆ 木目込み人形とはⅡ
細い溝を彫りその中に布を入れる。(溝の中だけに糊)この作業を「木目込む」という。(木目込人形の語源)
したがって、平面、直線的であれば易しく、凸凹があり、曲面や曲線が多ければ技術を必要とします。
◆ 襟(えり)
幅2、3ミリの襟、細い溝を彫り、一枚ずつ布を被せます。着物の重なった様子を表現します。
◆ 袖(そで)
袖の部分は、立体的に表しています。
曲面や曲線がとてもきれいでかわいい。
◆ 膝(ひざ)
雄雛の膝は、突き出たような丸みがあります。張りのある美しい球体です。
◆ 筆仕事Ⅰ
薄い墨で一つの目に百回ほど線を引きます。墨の濃淡で目をあらわします。
濃くなったところが瞳のように浮き出て見えます。
◆ 筆仕事Ⅱ
女雛の生え際は柔らかく、女性の優しさをあらわします。
◆ 筆仕事Ⅲ
雄雛の生え際は、長い線を加えて、男性の強さを表わします。
◆ 筆仕事Ⅳ
口は、二色で書き、優しさと立体感を、口角の細い線は、ほほ笑んだ表情を表しています。
◆ 結髪(けっぱつ)
髪結い(かみゆい)のことです。
「古典下げ髪」、「割り毛」と呼ばれ、木目込み人形に多い髪型です。髪の素材は絹糸。艶があり、ふっくら滑らかなボリューム感、潤平の特徴です。
◆ 絵付
盛り上がっているように見えると思います。これは、無地の着物を着せた後、手書きで絵を施したものです。
◆ 細部まで
着物の端に至るまで、細部まで表情をつけています。いつまでも飽きることのない味わい深さの追求です。
◆ 手の形Ⅰ
「手」はすべてオリジナル。
大きさや形が顔や身体と釣り合いが取れるように。指一本の線もはっきりとしていて、爪ひとつひとつに段差があり、色が付けられています。
◆ 手の形Ⅱ
幼い子供のふっくらとした手。
両手で扇を握らせて可愛らしさを強調させています。
◆ 手の形Ⅲ
閉じた扇を持っています。きちっとした手の形ででフォーマルな雰囲気を出しています。
扇の形状や糸も人形によって変えています。
◆ 手の形Ⅳ
右手は、親指と人差し指に力を入れ、左手は手のひらを少し丸くして扇を受けています。それぞれのお人形に合わせて表情を付けています。
五月人形を選ぶ時の
鎧・兜 豆知識
お節句に飾られる鎧・兜は、①自由に創作されたものと②本物をお手本として作られたものがあります。本物の鎧兜はどのようなものだったのかのご説明となります。選ぶ時の参考にしてください。
◆ 美しいものを飾る
男の子のお祝いには、「戦い」の道具ではなく、美術的に優れた美しい大鎧はいかがですか?
◆ 大鎧とは?
平安後期~南北朝。この時代の鎧は、色や姿が美しく、「大鎧」と呼ばれ国宝にも数多く指定されています。
戦うためではなく、大将の晴れ着として用いられた大鎧。神社に奉納されたことから、奉納鎧とも云われています。節句飾りに相応しい鎧です。
◆ 大鎧についてⅠ
大鎧は、決まりごとがたくさんあります。
時代考証に忠実で、美しいことが重要です。
用語とともにご説明します。
◆ 大鎧についてⅡ
兜(かぶと)・大袖(おおそで)・胴(どう)の三つの部分で一揃いです。一領(いちりょう)と呼びます。
領土と同じくらい大切であったようです。面、小手、足、くつなどは付きません。
◆ 蕨手紋(わらびてもん)
算用数字の3のような透かし彫りの文様です。蕨の芽が巻いた形をしています。「終わりがない」「永遠を願う気持ち」を表しています。
◆ 猪の目(いのめ)
ハートではありません。これは日本古来の「猪の目」という文様です。神社仏閣に多く見られ「火防守護」を願っています。文様の美しさと護符としての役割を兼ねています。
◆ 総角結び(あげまきむすび)
穢れを払い、幸福を招く飾り結びの代表格です。神社仏閣、大相撲など伝統的な場面で広く使われています。装飾性と命を守る護符の意味があります。
◆ 勝色(かちいろ)
平安時代、布を褐つ(かつ)=たたいて染めたこと に由来します。さらに、鎌倉時代、武士たちが濃い藍染めを好み、かつ=勝 の字をあてて縁起のよい色としました。
◆ 縅(おどし)Ⅰ
鎧に使われる糸や糸で編んだ部分のことです。
緒を通すことに由来しています。赤糸縅(あかいとおどし)は、強い生命力を表し多くの武将に好まれました。
◆ 天辺の座(八幡座)
天辺(てへん)の座、八幡座(はちまんざ)と云います。
兜の頭の天辺(てっぺん)にあたります。内側から玉縁(たまべり)、小刻(こきざみ)、菊座(きくざ)、葵座(あおいざ)と、4枚の合わせ金具でつくられます。
神の宿る場所とされています。
◆ 蝙蝠付(こうもりづけ)
写真中央、腰のあたり、革を使用するのが約束です。
◆ 縅(おどし)Ⅱ
紫裾濃(むらさきすそご)武道を重んじるという「尚武」と、植物の菖蒲を掛けています。菖蒲の花の色である紫、薄紫、黄、白の4色を使用。この色の鎧は御嶽神社(東京)にあり、昭和26年日本の鎧の代としてアメリカへ渡っています。
◆ 鍬形台(くわがただい)
鍬形の差し込み口です。唐草模様の透かし彫りがとてもきれいです。唐草は、葉や茎が途切れることなく伸びるため繁栄、長寿などを表す縁起の良い文様です。
◆ 魔除けの赤
すべての写真をご覧ください。鎧や兜には赤色が多く使われています。古来より赤には生命力があり、魔除けの力が宿るとされてきました。命を守ることへの強い思いが込められた魔除けの赤なのです。
◆ 大袖(おおそで)
肩から上腕にかかる部分、いわゆる袖(そで)にあたります。
縅(おどし)は、白糸褄取(しろいとつまどり)です。
◆ 兜の裏側
頭に当たる兜の裏側は、刺子をして丈夫にします。頭に直接当たらないように浮かして布が張られています。
ファッション性と機能性を兼ね備えています。
ヒモの通し方もご注目ください。
◆ 眉庇(まびざし)
帽子の庇(ひさし)にあたる部分。
◆ 総角(あげまき)
鎧の背中にも、赤い組み紐の総角(あげまき)が施されています。
袖が腕に寄り添うように考えられています。機能性、装飾性、護符として3つの役割をもっています。